ナガタ源平合戦〜5〜

 

 

 文化祭が終わると、中間テストに向けて一気に勉強ムードが学校を包む。腐っても県下ナンバーワンの公立校、定員割れとはいえ勉強の出来る人間が肩を並べている。休み時間に単語帳をめくっている奴もいれば、固まってふざけている奴もいる。しかし表向き遊んでいるように見えても、裏ではちゃんと勉強しているんだろうなという印象であった。

テストにおける中学と高校の大きな違いは、国語なら古文漢文現代文、数学もIとA、理科も化学物理生物と、単元ごとの分化が一気に進むことである。授業も課題もそこそこ真面目にやっている僕であったので、ちゃんと復習さえすれば心配はいらない。だが、僕は人よりも中間テストを頑張らなければならないという自覚があった。なぜなら、僕は合格後に出ていた春休み課題の存在を知らず、課題が範囲になっていた入学早々の実力テストを、本当に実力で受けることになったという苦々しい過去があったからである。

 

中間テスト二日目、僕は目を血走らせて高速長田駅へと向かう電車に乗っていた。昨日のテスト一日目が無事に終わったことから、安堵して優雅に午後を過ごしてしまい、夜十時になって教科書を開いたときに、全く手をつけていない生物の単元に気が付いてしまった。深夜二時までやったもの一段落したとは言い難く、朝起きてやろうと一旦ベッドに入ったがそのまま眠りこけてしまった。勉強できていないどころか、テストの時間に間に合わない。どたどたと音を立てて出て行った僕を、弟が目を丸くして見送った。

自動扉の前に立ち、駅に到着した瞬間飛び出せるようにスタンバイしている。今、「大開」と書かれ、うっすらと青く光っている駅の看板がガラスの向こうで瞬き、飛び去って行った。あと一駅で着く。鞄から定期の入ったパスケースを取り出し、右手、左手と持ち替える。

「まもなく、高速長田高速長田です。…」

到着のアナウンスに僕は体を硬くし、今から校舎まで全力でダッシュ出来るように身構えた。